ワシントンDCに来て一週間がたちました。明後日にはブエノスアイレスに移動する予定です。
8月に日本を発ってから、民主党が政権を取ったり、外務省が記者クラブ外のジャーナリストも記者会見に入れたり、首相がTwitterに興味を持ったり、日本では色々なことが起きています。日本の民主党もオープン化を唱えていますが、アメリカ政府のdata.govやイギリス政府の
hmg.gov.uk/dataなど、海外政府によるデータのオープン化が進んでいます。そんな中、ワシントンDCに行って何が起きているのか、色々勉強してみたら何かの役に立つのではないかということで来てみたら、ワシントンDCはめちゃめちゃ面白いです。
最初はDCには知っている人が一人もいないので大丈夫かなと思っていたのですが、Glocomの庄司さん・渡辺さんが色々な方を紹介してくださったり(ありがとうございます!)、GovloopのSteveが色々な方を紹介してくださったりして、そこから会った人が更に人やイベントを紹介してくれるというポジティブループが始まりました。e-governmentやオープンガバメント、政府によるIT/webの利用などをテーマに毎日何件も取材をしまくっています。ものすごい刺激を受けてます!
Brookingsという超有名政策研究シンクタンクのVPであるDarell Westさんには色々なことを教わりました。e-governmentについては色々な成果が出ていて、組織内のコミュニケーションのあり方から市民の現場レベルまで。例えば既に税金を払うのは2/3がオンラインになっていて、まだ増え続けているとか。
組織のあり方も面白くて、以前は官僚たちは孤独な仕事の仕方をしていたのが、省庁内でのコミュニケーションも、省庁間でのコミュニケーションも円滑になってきているとのこと。Department of AgricultureのAmanda、Department of StateのLovisaという女性二人へのインタビューをしたのですが、省庁横断、かつ州レベルの人たちも参加しているサブグループがあって、彼らはそれで出会い、省庁は異なるながらも情報共有をしながら業務を行っているとか。Amandaは元々はエージェンシー側で働いていたのですが、オバマ政権になってソーシャルコミュニケーションを行う役職ができたということでDepartment of Agricultureの職についたとのこと。政府として目指すところがあって、そのためにポストを作り、それに最適な人材を外から連れてきてどんどん活躍してもらう。本人もとてもやりがいがあるといいます。政府機関のソーシャルコミュニケーションの使い方についても色々聞きましたが、面白かった話の一つがLovisaの仕事で、彼女は海外向けに広報活動を行っており、そのためには自分たちのプラットホームでやってもしょうがない。TwitterやFacebook等はもちろんとして、中国人向けはQQNet、ブラジル人向けはOrkutのように相手に合わせて色々なプラットホームを使ってやっているとのこと。
Department of Defense (DoD)の話も面白かった。昔はArmy,Navy等それぞれが情報を持っていて横断での情報共有はされていなかったのが今はIntellipediaというMediawikiを使ったプラットフォームが作られていて、軍部横断での情報交換もされているとか。もう一つDoD で面白いと思ったのはブロガー施策。防衛関連に関心があってブログを書いている人が多いけれど、情報が足りていない。しかし、DoDとしては情報を出しても「ニュースだ」と思われる物でないとメディアは取り上げてくれない。メディアに出ないとブロガーに情報がいかない。この悪循環を断ち切るため、バグダッド等の現場にいる人たちとブロガーを電話会議でつないであげて、ブログを書けるようにしてあげたというもの。これがブロガーにも現場の人たちにも非常に好評でずっと続いている。内容は本当に多岐に渡るそうです。「例えば住宅問題とか」と言われて少し驚きました。「DoDが住宅問題?なんで?」と聞いたら軍の人たちは色々な場所に派遣されたりするので、住宅問題というのは重要らしい。でも、そんな話題はメディアは取り上げてくれない。でも、そういった問題についてじっくり現場と電話会議で語ると、ブロガーはじっくりブログを書いてくれる。日本の記者会見問題で「(記者クラブ所属でないジャーナリストに)ちゃんとした質問ができるのか」的な質問があったような報道を見たけれど、この施策ではそもそも防衛関係に関心のあるブロガー達を集めているのでメディアよりもずっと良い質問をするという。しかも、それらのブログの記事によってメディアが勉強するようになって、メディアの知識レベルもあがったとのこと。などなど、非常に面白い話が盛りだくさん。
もちろんアメリカの事例を何でも日本に持っていけばいいというものではありません。ワシントンに在住の日本人の方達にもお話を伺ったのですが、彼らは日米の両方を非常によく見ていて、カルチャーの違いとかどういうところに問題がありそうかとか色々考えておられるので参考になります。これもまとめたい。
また、アメリカマンセーということだけではなくて、今朝参加したシンクタンクのワークショップは「アメリカは今、イノベーションがなくてやばい」ということを原点として、何が問題なのか、海外はどうなのか、どうしたらいいのか等を4人のスピーカーが語り、オーディエンスとディスカッションするという物で非常に興味深かった。昔は大企業がイノベーションをどんどん行っていたけれど、今は短期的収益を求められるのでR&Dに回す余裕がなくなり、イノベーションが起こりにくくなっているが、今こそイノベーション政策が必要とかそういう話で。
こういったロビイストやシンクタンク等の開催するワークショップがワシントンDCでは毎日たくさん開催されているそうで、申し込みさえすれば誰でも参加でき、無料の物も多いとのこと。DC在住の人はそういう案内が一日100通とか来るらしい。で、政府の人も役人も企業の人もNPOの人もいっぱいそういう会合に出てるのでみんな顔見知り。今朝のはすごく小さなワークショップだったのですが満席で、オーディエンスには議員の人や世界銀行のアドバイザーの人とかも来て質問とかコメントとかしてました。世銀の人はもちろん海外事情の報告について実はこうなんじゃないという意見を述べたり、自動車産業についての話には、オーディエンスからミシガンに住んでずっと自動車産業事情を研究しているという人が意見&質問をしたり。色々な分野の第一人者が集まって色々な角度から議論をする機会が非常に多いと思いました。先週参加したカンファレンスも、無料で誰でも入れる(事前登録要)のにホワイトハウスの中の人とかAT&Tの副社長とかFBIとかICANNとかFTCとかNPOとか教授とか弁護士とか本当に多様な人たちが集まっており、インターネット犯罪についてみんなでガンガンやってて非常に面白かったです。
FCCやGoogleもegovernmentを促進するために色々な施策をしていてすごくインタビューが面白かったので改めてちゃんと書きたいし、ロビーイングについても面白かったので改めて書きたい。。。今まで私はアメリカはベイエリア中心に訪問していて、新しいテクノロジーとかサービスとかをどんどん追いかけていたのですが、ワシントンDCの人たちからはサイバークライムについてとかネットニュートラリティーについてとかそういう話がたくさん出てくる。「国について」考えることが染み付いた人が多い。「オープンであろう」という意識の人が多い。全然違う分野の人同士が非常によくつながっている。FBIの人に、「どうやって情報を得るんですか?」という質問をした人がいたのですが、「こうやって会合にどんどん出てるんです」って仰ってました。
Craigslistを作ったCraig Newmarkさんともやり取りさせて頂いたのですが、彼は今Gov2.0に非常に力を入れています。
いわく、「たいていの人と同じで本当は政治について考えるよりテレビを見てた方がよっぽど楽しいんだけど、今は本当に重要な変化の時期で、放っておくには重要すぎるんだ。ワシントンでイノベーションを起こさせたいと思ってやっているんだ。」日本のIT業界の皆さんの知見も、日本の政府の重要な変化に際して、色々な貢献ができるのではないかと思います。Googleのegovernment担当のGinnyのインタビューでも、「日本のサブカルの人やギークの人たちが政府のIT化に貢献できることはたくさんあるはず!」と仰っていました。
まだまだ書きたいこと山積みですが、とりあえず生きてワシントンDCでがんばってますという報告でした :)