マイケル・ジャクソンさんが亡くなってしまったことを消化するのに時間がかかる。
小学校の頃、私は父の仕事の都合でアメリカに住んでいた。
クラス中がマイケルやらマドンナやらに夢中で、みんなが moonwalk を練習していた時代だった。
そんな中で発表された USA for Africa の "We Are The World"。
テレビで特番が組まれ、エチオピアの飢餓の様子、We Are The Worldの撮影風景、もちろん全編が流され、
それを今は亡きベータマックスの小さなテープに録画して死ぬほど繰り返し見ていた。
自分たちに何ができるんだろうと思ったけれど、当時はお金もないので親にWe Are The World�を買ってもらうぐらいしかできなかった。
小学生時代は偏食がすごかったけど「エチオピアの子達は食べたくても食べられないのよ!」と言われると食べるようになった。
当時のアメリカの小学校では Beat ItとかBillie Jeanとかノリのいい曲が流行っていたけど、子供たちの心の中に、平和とか、飢餓とか援助とか愛とかいうメッセージを強烈なインパクトで植えつけたのが We Are the World だった。
修学旅行のキャンプ版みたいなイベント (Outdoor Education) では先生方に秘密で学年全員で We Are the World を暗記し、山の中で歌った。先生方は号泣していた。
人種差別はそれほどないクラスだったけど、肌の色の違いも人種の違いもあった。差別はないけど区別はあったと思う。肌の色については先生方も言葉を選んでいたと思う。先生が混血の子を「チョコレート色っぽい」と言ったことがあって、それがOKな言い方だったのかどうかを小学生だった私には判断できなかった。でもそれが politically correct なんだろうかと反射的に思う程度には、小学生もそのへんにセンシティブになっていたのだと思う。(20年以上たっても覚えている程度には)人種差別がないというのはラッキーだったわけで、帰国子女仲間の中には日本人だというだけで差別をされて大変だったという子もいた。
宗教はユダヤ教の人が結構多くてキリスト教と半々ぐらいで、後は色々という地域。無宗教だった私は宗教を聞かれて返答に困った。英語がまだあまりわからなかった私はAtheistという単語を知らなかった。でもまあ「あなた何教だっけ?」という質問が小学生の間で世間話の一つとして出る程度にはタブー視されていなかった。Hanukkahとクリスマスは両方祝っていた。
授業の中には海外について調べるみたいなのもあって、一人一カ国ずつ調べて、発表するということになっていた。トルコやイタリアの通貨のゼロの多さにみんなで驚いていたら「お前の日本もすげー桁数じゃん」と言われて気づいた。当時子供たちがよく買っていたのは25セントのガムや35セントのお菓子。10ドルとか50ドルとか大金に感じられる中、1,000(円)とか10,000(円)という単位はアメリカの小学生には途方もなく大きく感じられた。数えるのが大変だねと笑われた。日本円のことだけ考えると当たり前なんだけど客観的に桁数見ると確かに大きい。このときに政情とかGNPとかも見ていたと思う。もちろん当時はインターネットなんてなかった。
ちょうど大統領選挙があって、授業でも投票が行われた。 Ronald Reagan 候補 VS Walter Mondale 候補で、 Mondale氏は副大統領候補に�Geraldine Ferraro さんという女性を挙げて戦っていた。各候補のことを知らないと投票なんてできないので、子供たちは各候補のことを結構調べてた。その頃のキャンペーン動画を�YouTubeで発見。こういうのをメディアで浴びながらも、それぞれが色々と調べ、それぞれが投票する。勉強した内容のシェアは行われず、各自の投票の内容も公開されず、あくまで最後の投票結果だけが公表された。うちのクラスで勝ったのは Mondale氏だった。実際の大統領選挙で勝利したのは Reagan大統領。クラスメイトの母親は Mondale/Ferraro に「女性の未来」を託しているぐらい入れ込んでいたらしく、選挙結果に恐ろしく落胆していた。そのお母さんは何事も強烈な人で、友達はベジタリアンを強要されたり(本人はカフェテリアで秘密でハンバーガーとか食べてたけど)色々大変そうだった。
流行り廃りが激しくて、一度クラスメートの男の子が「カマカジ」というのをクラスで流行らせたことがあった。どうやら「カミカゼ(神風特別攻撃隊)」のことをどこかで聞きつけて、それを「かっこいい」と思ったらしい。深い意味もわかってなさそうな子供たちが「カマカジー」と叫びながら校庭で飛行機のふりして腕を広げて校庭を駆け回り、突っ込みあいをしている姿を小学生の私は複雑な思いで生暖かく見守っていた。(一応色々突っ込みは入れたけれども、暴れん坊な男の子たちはエキサイトしすぎてちゃんと聞いてくれなかった。) Pearl Harbor が公開されるより全然昔の話です。
こんなことを書いてもしょうがないかもしれないけど、「政治と宗教の話は日本では禁じられてる」というはてなブックマークのコメントを頂いた時に、思い出したことをちょっと書いてみました。あくまでn=1ですし、地域によっても全然シチュエーションは違うと思いますが、20年ぐらい前のアメリカの普通の小学校の一つではこんな感じだったということで。
で、吸収が早くて感受性の強い小学生たちがマイケルジャクソンと We Are The World から与えられた影響というのはやっぱりとても大きくて、あの時代を共有したアメリカ人の多くにとってはただのアイドルが亡くなったということではないのだと思う。特に African American の子達に与えた影響はすごく大きかったと思う。
私の中での暴力反対・差別反対・平和主義・地球を大切に・自分が何をできるか考えよう。。。等の思いの根本は小学校時代に見た We Are The World の映像に端を発し、その後の作品に影響されている気がしている。マイケルの歌の歌詞には、愛があふれている。マイケルの曲も声も映像も素晴らしいけれど、歌詞とメッセージにも注目してほしい。
What have we done to the world�
Look what we've done�
What about all the peace�
That you pledge your only son...�
What about flowering fields�
Is there a time�
What about all the dreams�
That you said was yours and mine...�
Did you ever stop to notice�
All the children dead from war�
Did you ever stop to notice�
The crying Earth the weeping shores�
Heal The World
Make It A Better Place
For You And For Me
And The Entire Human Race
There Are People Dying
If You Care Enough
For The Living
Make A Better Place
For You And For Me
I'm Starting With The Man In�The Mirror
I'm Asking Him To Change�His Ways
And No Message Could Have�Been Any Clearer
If You Wanna Make The World�A Better Place
Take A Look At Yourself, And�Then Make A Change
It Don't Matter If You're�Black Or White
If They Say -�
Why, Why, Tell 'em That Is Human Nature�
Why, Why, Does He Do Me That Way�
That you are not alone
For I am here with you
Though you're far away
I am here to stay
Carry Me
Like You Are My Brother
Love Me Like A Mother
Will You Be There?
There comes a time�
When we head a certain call�
When the world must come together as one�
There are people dying�
And it's time to lend a hand to life�
The greatest gift of all�
We can't go on�
Pretending day by day�
That someone, somewhere will soon make a change�
We are all a part of�
God's great big family�
And the truth, you know love is all we need�
We are the world�
We are the children�
We are the ones who make a brighter day�
So let's start giving�
There's a choice we're making�
We're saving our own lives�
It's true we'll make a better day�
Just you and me�
最後に。こんな時代だからこそ。
"There's nothing that can't be done if we raise our voice as one"
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